【木造4階建ての戸建て・アパート】メリット・デメリットと価格相場を解説
近年、木造で4階建ての戸建住宅やアパート、店舗やオフィス併用住宅を建てる事例が増えています。
しかし、なぜ木造が増えているのか、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などと比べてどのような点が有利なのか、分かりづらい点も多々あります。
そこで、今回は建築士が「木造で4階建てを建てる」メリット・デメリットと価格相場を詳しく解説します。
施工事例も紹介しますので、住宅の新築や建て替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
■ 4階建ての戸建て住宅やアパート、店舗併用住宅を木造で建てる事例が増えています。
■ 木造の4階建てには、コスト面や環境面においてメリットがあります。
■ 木造の4階建ては、設計施工実績がある会社へ相談しましょう。
■ アイホームズは、昭和43年創業以来、これまで東京23区を中心に「高気密高断熱・高耐震」な木造・重要鉄骨造住宅を数多く手掛けてきています。
目次
建築基準法改正で“木造中層建築物”が増加中|耐火・準耐火
これまで、一定高さ以上の建物に関して、防火に関連する規定によって木造で建てるハードルが高く、施工事例は限られていました。
しかし、2010(平成22)年に施行された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:木材利用促進法)」で建築物一般を対象に木材を積極的に利用するように推奨され始め、それにともなって建築基準法が改正されました。
中層建築物における木材利用の推進にあたり、これまで障壁であった建築基準法の防火規定について、改正によって「階数に応じて要求される“耐火性能基準の合理化”」が進み、木造化の実現性が高まりました。
実際に、全木造ビルの施工事例は増加傾向にあり、地上10階を超える物件もあるほどです。
では、ここで建築基準法及び施行令の改正変遷を簡単に紹介します。
改正年 | 改正内容 |
---|---|
2019年 (令和元年) | 【改正前】 ・「高さ16m超又は4階建て以上」の建築物について、すべての壁・柱等が耐火構造でなくてはいけない 【改正後】 ・建築物全体の性能を総合的に評価することにより、耐火構造以外の採用が可能に(燃えしろ設計の採用など) ・耐火構造等としなくてよい木造建築物が「高さ16m以下かつ3階以下」に拡大 |
2024年 (令和6年) | 【改正前】 ・階数5の建築物と階数14の建築物の最下層に関して同水準の耐火性能が要求される(最上階から階数4以内=1時間耐火性能・最上階から階数5以上14以内=2時間耐火性能・最上階から階数15以上=3時間耐火性能) 【改正後】 ・木造中層建築物に適用する耐火性能基準の合理化(階数5以上9以下の建築物の最下層は90分耐火性能で設計可能) |
上記以外にも、2024年には高層建築物・大規模建築物に関わる改正も実施されました。
- 【建築基準法第2条第9号の2ほか】大規模建築物における部分的な木造化の促進
- 【建築基準法第21条・第27条・第61条】防火規定上の別棟扱いの導入による低層部分の木造化の促進
- 【建築基準法第26条】防火壁の設置範囲の合理化
このように、技術進歩に順応できる建築基準法の合理化によって、今後はより一層中規模・中層以上の木造建築物増加が期待されています。
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4階建てを木造にするメリット
中層建築物を木造で建てることは、トレンドと言っても過言ではありません。
では、なぜ今4階建ての戸建住宅やアパートなどを木造で建てる事例が増えているのでしょうか。
メリットは主に以下の点です。
建物荷重が軽く地盤への負荷が小さい
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)と比べて、材料が木材であることから建物の総重量が軽く、地盤への負荷を小さく抑えられます。
そのため、地盤改良が必要なエリアでも地盤補強工事を最小限に抑えられる点がメリットです。
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他の構造と比べてコストを抑えられる
他の構造よりも地盤改良の費用を抑えられるため、総コストも比較的リーズナブルです。
ただし、木造軸組構法を用いるのかCLT(※)を用いるのかによって、基本価格は異なります。
※CLT:Cross Laminated Timber(直交集成板)の略称で、挽板(ひきいた)を繊維方向が直交するように積層圧着した耐久性と断熱性を持つ建築材料で、高層木造ビルの構造体にも用いられる
鉄筋コンクリート造と比べて工期を短縮できる
コンクリートは施工だけではなく乾燥させるための養生期間が必要です。
対して、木造は乾燥期間が必要なく建物重量が軽いため、基礎工事にかかる時間も短縮できます。
そのため、トータルにかかる工期は鉄筋コンクリート造よりも短くて済む点がメリットです。
他の構造と比べて大掛かりな重機の使用が少ない
木造は材料重量が軽いため、他の構造よりも大掛かりな重機や工事車両を使うシーンが少ない点もメリットです。
そのため、敷地の前面道路が狭い都心の住宅密集地などに多く採用されています。
将来、建て替える際に解体するときも同様です。
地球環境にやさしい
木材は、鉄などの金属やコンクリートと比べて、製造家庭で排出される炭素量が少ない“省エネ”建材です。
また、木材を生み出す森林は、二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵する機能を果たし、木材自体も、伐採後に利用されると森林と同様に炭素を溜め込みます。
木材用に木々が伐採されて新たに植林されると、森が活性化して、より多くの二酸化炭素を吸収することも分かっています。
このことから、木造建築物は地球環境にやさしい建物と言われているのです。
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4階建てを木造にする際の注意点とデメリット
4階建ての木造が増えている背景には、コスト面だけではなく環境面におけるメリットがあります。
ただし、以下のデメリットもあるため注意しましょう。
設計施工できる建築会社が限られる
木造の4階建ては、平屋や2階・3階建てとは設計施工における技術や知識が異なります。
耐火・準耐火構造に関する深い知識や構造計算に基づく設計がより重要となるからです。
そのため、木造で4階建てを新築・建て替えする場合は、必ず施工実績のある会社を選びましょう。
“法定”耐用年数が短い
国税庁が定める住宅の法定耐用年数は、「木造22年」「鉄骨造19~34年」です。
つまり、店舗・オフィス併用住宅や賃貸アパートを建てた場合に、減価償却できる期間(新築費用を分割して経費計上できる期間)が短い点には注意しましょう。
ただし、ここで重要な点は「法定耐用年数=寿命ではない」という点です。
国土交通省のデータによると、高品質な木造住宅の期待耐用年数は「100年超」、一般的なグレードの住宅でも「50〜60年」程度が想定されています。(引用:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新による価値向上について)
また、2011年の調査で木造住宅の平均寿命は「64年」です。
そのため、木造住宅が他の構造よりも短命とは限りません。
在来軸組構法では大空間を確保しにくい
柱と梁を組み合わせて耐力を確保する在来軸組構法では、広い空間は作れません。
巨大な建物で梁を太く大きくできない限り、一般的には柱がなくても必要耐力を備えるにはせいぜい4〜5mの距離が限界です。
そのため、1階を柱のない広々とした店舗やオフィスにしたい場合や複数台停められる駐車スペースにしたい場合は、部分的に鉄骨造を取り入れたハイブリッド構造にする必要があります。
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4階建て木造建築物の価格目安|坪単価
では、実際に木造で4階を建てた場合の価格相場を紹介します。
ここで参考となるのが、国土交通省の公表している構造別新築住宅建築費用です。
2023年に建てられた一戸建て住宅(持ち家)の建築コストは以下の通りです。
構造種別 | 全国平均 施工単価(㎡・坪) |
---|---|
木造住宅 | 22.6万円/㎡ 74.6万円/坪 |
鉄骨造住宅 | 32.5万円/㎡ 107.2万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 37.5万円/㎡ 123.8万円/坪 |
構造種別 | 東京都平均 施工単価(㎡・坪) |
---|---|
木造住宅 | 24.6万円/㎡ 81.2万円/坪 |
鉄骨造住宅 | 38.8万円/㎡ 128万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 62.3万円/㎡ 205.6万円/坪 |
上記金額を見ると、全国平均・東京都平均どちらにおいても木造が最もリーズナブルな点は明らかです。
そのため、初期費用を抑えながらも最大限に土地を有効活用でき、賃貸物件の場合は収益性が高まります。
ちなみに、最近増えているCLTを用いた場合、通常の木造よりもコストは上がり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造とほぼ同等のコストがかかります。(参考:岡山県ホームページ|CLTの建築コスト調査を行いました!)
木造4階建ての施工事例
アイホームズは、東京23区を中心に耐火性・耐震性に優れた木造住宅を数多く手がけています。
その中から、4階建ての事例を紹介します。
都内初!耐火木造4階建て免震住宅
こちらは、都内発「耐火木造による4階建て住宅」の事例です。
間口が狭い狭小地(41.03㎡・12.4坪)ながらも、階数を高くすることでテレワークできるスペースも確保しました。
このような狭小地での建築工事は、周囲に余裕のある敷地とは異なるノウハウや技術が必要です。
敷地の間口はなんと4m弱!木造店舗併用住宅
こちらは、墨田区内の防火地域にて、3階+屋上へ上がれる塔屋(ペントハウス)を作った事例です。
間口は4mで55㎡ (16.63坪)の敷地ですが、建物高さを高くすることで居住スペースと店舗スペースの両方を確保しました。
屋上からはスカイツリーが目の前に見えます。
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まとめ
木造で4階建ての戸建住宅やアパート、店舗併用住宅を建てる事例が増えています。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて、コストを抑えられるだけではなく、地球環境にやさしい点も重要なメリットです。
ただし、どこの建築会社でも設計施工できる訳ではありません。
そのため、施工実績が豊富な会社へ相談しましょう。
アイホームズは、昭和43年創業以来、東京23区内で「高気密高断熱+高耐震」の家をリーズナブルな価格で数多く手がけてきた実績があります。
ずっと安心して住み続けられる家を建てたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社 アイホームズ
FAX:03-3613-6149
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