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地盤改良の費用と手間は惜しんではいけない

2020年12月24日

みなさん、こんにちは。

五十嵐です。

 

良い家を建てるには、建物と土地と地盤の3点に注意を払わなければいけません。

そう聞くと、違和感を覚える人もいるかもしれません。

建物には住む人それぞれにこだわりや理想がありますし、

それを実現するために業者に高いお金を払って設計・建築してもらうので、

誰でもまず一番に注意を向けます。

 

土地もまた、理想の環境を求めてあちこち歩きまわって場所を探し始め、

1坪いくらのお金を払って手に入れるのですから、

軽視する人はいないでしょう。

 

しかし、地盤は家づくりにおいて非常に大切な要素でありながら、

それほど注意を払う人が少ないのが現実です。

 

 

 

 

 

 

 

地盤とは何かというと、建物を支える土地の品質です。

建築後に住宅に不具合が生じるとき、その原因の大半は地盤にあると言われています。

外壁や内装に亀裂ができたり、窓やドアがきしんで開きにくくなったり、

極端な例だと建物が傾いてしまったり。

これらは多くの場合、「不同沈下」と呼ばれる現象によって引き起こされています。

 

 

 

 

 

 

そして、地震時には地中で液体状になった砂が地表に噴出し、

地面がえぐれて建物が沈下してしまう恐れもあります。

 

 

●軟弱な地盤は建物の耐久性を損なう

断熱性や気密性にどれだけ神経を使って家を建てても、

こんな不具合に見舞われてしまえば、

せっかく手に入れた理想の住まいも台無しです。

もちろん、資産価値は望むべくもありません。

 

現在の「耐震基準」で設計された建物は、

震度6強~7クラスの地震でも倒壊・崩壊することはありません。

しかし、地震の被害は複合的で、建物の倒壊だけでなく、

液状化による不同沈下や、家具が倒れてきたり慌てて転んだり、

ガラスや食器が割れてケガをするということも「地震の被害」と言えます。

 

また、電気や水といったライフラインが守られていなければ、

家と人が無事でも地震の後の生活は不自由なものになります。

 

東日本大震災では、建物自体はほとんど壊れていないのに、

家が傾いてしまったために住めなくなった家がたくさんありました。

 

こうした住宅の中には、建てる前に地盤の調査・解析をしっかり行い、

必要な改良工事を施して、地盤を強固にしておくことで、

震災後もそれ以前と同じように住み続けることができた物件もあったはずです。

 

たとえ、東日本大震災クラスの地震が起きなかったとしても、

軟弱な地盤の上に建てられた家は、

それだけで耐久性に大きな問題を抱え、

時と共に「不同沈下」の影響を受けることになります。

 

 

●家を建てるときには、必ず事前に地盤調査を行いましょう

だからこそ、最初に地盤調査を行って、

その地盤がどれくらいの重さに耐えられるなどを調べておくことが重要なのです。

もし問題が見つかったとしても、その土地を諦める必要はありません。

建物を建てる前に適切な地盤改良工事を施して、地盤を補強すればいいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都は平均で約30%の土地に地盤改良が必要だというデータがあります。

隅田川東岸の墨田区や江東区などでは数値が大幅に上がります。

 

また、住宅などの建物は、

もともと地盤が良いとされるところから建てられていくものなので、

新しく開発された分譲地などでは、古くからの住宅地と比較すれば

地盤が悪い可能性が高く、結果的に地盤改良率が高くなる可能性があります。

 

多くの新興住宅地で建築前に地盤改良工事が行われているはずです。

ところが、自分の家が建っている土地、あるいは建てようと思っている土地に

地盤改良が必要かどうか理解している人はほとんどいません。

 

●説明しない住宅会社が多い

これは消費者側の問題と言うより、供給する側の責任です。

一般社団法人住宅不動産資産価値保全保証協会が実施したアンケート調査で、

マイホームを建てたばかりの人や建てている最中の人、

これから建てようとする人を対象に、

住宅会社から受けた地盤に関する説明内容を尋ねたことがあります。

 

「地盤調査・調査結果について詳細説明がありましたか」と言う質問に、

「あった」と答えた人は約36%。

「なかった」と答えた人は約56%

 

「地盤改良工事について説明がありましたか」という質問には、

「あった」と答えた人は約31%

「なかった」と答えた人は約61%

 

一方で、「地盤調査結果について説明してほしい」と答えた人は、

全体の約72%に達しました。

 

つまり、住宅会社の半数以上が、地盤に関する説明を怠っているわけです。

こうしたところにも、住宅業界にはびこる顧客軽視の姿勢が垣間見えます。

 

 

●品確法施行後に増加した地盤保証会社

2000年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)

という法律が施行され、地盤に関する法解釈が変わりました。

この法律の施行前は、地盤が原因で事故が発生しても、

住宅会社が法的責任を問われることはありませんでした。

 

事故やトラブルが発生すれば、費用を含めて、

住んでいる人自身が対応するしかなかったのです。

施行後には、建築後10年間は住宅会社が責任を負うと改められました。

消費者保護の観点に立った法律ができたのです。

 

その結果、何が起こったかと言うと、地盤保証会社の台頭(たいとう)です。

住宅会社は地盤の専門家ではないので、

代わって地盤保証会社が調査と改良工事を請け負うのです。

 

ところが中には、「その改良工事は本当に必要ですか?」をキャッチフレーズに、

「地盤改良不要判定率88%」という”実績”を売りにする会社も現れました。

「地盤改良工事の実施率を30%減らします。その代わり、

事故が起こった場合に備えた保証料は、通常5万円のところ10万円」というのです。

 

 

●安心・安全な暮らしの為に、地盤改良の費用は惜しまない

お金と時間がかかる改良工事を行う必要がなくなれば、

100万円近い工事費を節約することができます。

住宅会社は、施主に工事費100万円+保証料5万円を請求するはずだったのが、

「地盤改良不要」と判定されたおかげで、

改良工事の必要がなくなり10万円の保証料だけ請求すればいいことになります。

 

 

 

 

 

他社よりも95万円も安く建てられるというのは、

魅力的な営業フレーズとして利用できます。

飛びつく住宅会社も出てくるわけですが、冷静に考えれば、

かける保証料が高いのは、建物が傾いてしまう危険性の高さを

示していると分かるはずです。

 

例えるなら、高齢者など病気になり確率が高い人が保険に入る場合、

保険料が高くなるのと同じことです。

 

 

●地質調査の情報は国のデータベースで確認できます

賢い消費者は、

「費用が安くて、手間がかかりません」といった

甘い文句に騙されてはいけません。

現在は国のデータベースで、

過去の公共工事で行った地質調査の情報が公開されています。

自ら関心を持って、情報を集めることも大切です。

 

住宅会社の仕事は建物を傾かせないことであって、

改良工事の実施率を下げることではありません。

そもそも、顧客を危険にさらして利益を得ようとするなど、

ビジネスモラルとして間違っています。

 

住宅会社は地盤のプロではないので、地盤調査を外注するのは当然としても、

安心して任せられる地盤改良業者をネットワークに持ち、

調査結果を包み隠さず消費者に説明しなければなりません。

 

皆さまが家を建てるときには、顧客の安全をしっかり考え、

説明責任をきちんと果たす会社を選んで欲しいと願ってやみません。

 

大震災が増加している中、なにより大切なのが、

そこに住むあなた様が地震対策をしっかり考えることです。

業者任せにせず、間取りやデザインと同じように、

積極的に意見しながら家づくりを進めることで、

その後の長い「安心」を手に入れることができます。

 

 

 

 

 

 

地震に本当に強い家。

それは、ただ倒れない・壊れないだけではなく、

そこに住む人の命と毎日の生活を守れる家なのです。

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