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家具が凶器になる

2020年01月20日

■重たいものほど動きやすい

皆さんこんにちは、中原です。

家が倒壊しなければ、命を奪われる確率は格段に減ります。

しかし、地震で怪我をした人の半数は家具によるものです。

 

つまり、どんなに頑丈な家に住んでも、

住まい方次第で被害を受けるということです。

ですから暮らし方の中にも地震対策が必要なのです。

 

例えば普段の生活の中では、

簡単に動くはずもないと思い込んでいる冷蔵庫やタンス等が、

大きく動いて人を襲います。

それはそうです。

大きなビルや道路までもが揺れるのですから、

それに比べれば当然のことながら、

家の中にある重たいものなど簡単に動きます。

 

逆に、重たいものほど動きやすいのです。

こうした家具等が動くのには、地震の加速度が関係しています。

加速度と、マグネチュード・震度については、

すでに前のブログで簡単にご紹介しました。

あらためて加速度はガルで表されます。

 

中越地震の1000ガル超は、

いわば建物を真横にしているのと同じことですから、

家の中にある家具類が、

固定してなければ動いてしまうのは当たり前のことです。

2008年の岩手宮城内陸地震では一関市で観測した4022ガルが、

地震の最大加速度としてギネスに認定されています。

 

引力の4倍の力が働けば、山だって崩れます。

家具が動くのも当たり前です。

重たいものは動きにくいと思いたくなりますが、

動いているのは地面であり、軽いものは家の動きに合わせて

一緒に動きます。

 

しかし、重たい物は慣性の法則が働いて動こうとはしません。

つまり動いている地震の現場にいれば、

重たいものほど動いているように見えるのです。

家の中では「家具が飛んでくる」というような

被災者の証言があるのは、決してオーバーな表現ではないのです。

 

現実の地震でも、家の内部で負傷した人を調査すると、

半数近い46%が家具の転倒や落下によるものとわかっています。

阪神淡路大震災でも調査結果です。

このデータの中では、家屋の倒壊はわずか3%です。

 

家屋が倒壊すれば、怪我では済まない人の被害が表に出ますが、

負傷も大きな被害です。

特に、緊急時の被災時では、医療環境も日常ではなく、

廊下やテントで治療を受けている風景をよく目にします。

そうした負傷のいちばんの原因が、

普段は家に置いてあった家具なのです。

 

さらに、負傷している人のグラフに目を移して、

2番目に多いのはガラスです。

合わせると75%、4人に3人が家具とガラスで負傷しています。

内部被害ですから、家でくつろいでいる時に、

周囲を見渡してみて下さい。

窓ガラスの他にも、ガラスは見えるでしょうか。

 

おそらく、意外とたくさんあると思います。

決して、ガラスで負傷しているというのは、

窓ガラスだけのことではないはずです。

 

家具に使われているガラスも、

あるいは食器のガラスも人の負傷に関わっているのです。

地震の時には、こうした家具の数々が、凶器になっているのです。

 

 

■キャスター付きの椅子は動きにくく

じつは水道のカランと同じように、最近の家具には、

人間工学的には反対の地震対策があります。

今、キャスター付きの椅子に座られている方は、

座ったままちょっと動かしてみて下さい。

キャスターが付いているので当然のことですが、

簡単に動くと思います。

 

では、立ち上がって同じように椅子を動かしてみてください。

その時に、簡単に動くようであれば、それは古い椅子です。

じつは最新の椅子は、空の時にはキャスターにブレーキが

かかるようになっていて動きにくくなっています。

この状況も、人間工学的に考えると逆になっているように感じます。

 

そもそもキャスターが付いていることは、

容易に動かせるようにしたいということなのですが、

席の準備をしようと思って椅子を動かそうとすると、

空の椅子は動きにくいのです。

ですから体重をかけて動かさなければなりません。

 

逆に席を決めて座っている時に地震が来たら動いてしまいます。

本来であれば逆の方が良いと考えたくなるのですが、

最新式の椅子では、これが標準です。

 

地震が起きた時には、椅子に座っていることは危険ですし、

人が座っていない椅子が、地震動で暴れては

怪我をする可能性があります。

人間工学は日常的な動作の効率を求めますが、

地震時というのは、いかにも非常時であるということです。

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