木造住宅と鉄骨造住宅どちらがいい?性能・価格の違いを徹底比較
これからマイホームを建てる方の中には、木造住宅にするか鉄骨造住宅にするか迷っている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、今回は建築士が「木造と鉄骨造」について、それぞれのメリット・デメリットや、性能(耐震性・防音性・防火性・寿命)と価格の違いについて詳しく解説します。
そのほか、木造・鉄骨造の見分け方や建築施工会社選びのポイントなど、お客様からよくいただく質問にもお答えしますので、住宅の新築や建て替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
■ 家の構造を決める際は、「土地の条件・性能・価格・工期」など、いくつもの視点でご要望に合うかを確認することが重要です。
■「プロの意見を聞いて決めたい」という方は、木造も鉄骨造も両方手掛ける建築会社へ相談しましょう。
■ アイホームズは、昭和43年創業以来、これまで東京23区を中心に「高気密高断熱・高耐震」な木造・重要鉄骨造住宅を数多く手掛けてきています。
目次
木造住宅のメリット・デメリット
木造(W造)は、日本において最も多く住宅へ採用されている構造です。
柱・梁などの構造体で荷重を支える「在来軸組工法」と、壁・床・天井と面で荷重を支える「枠組壁工法(ツー・バイ・フォー)」に分かれますが、どちらにも共通するメリットと事前に知っておくべきデメリットや注意点があります。
メリット
- 材料費が安い(良質でコスト変動の少ない国産材の採用事例が増えている)
- 工事費が安い(材料が軽く加工しやすいため、施工効率が良い)
- 断熱性が高い(木材は建築材料の中でも断熱材と同じく熱を伝えにくい)
- 狭小地や前面道路が狭い土地でも施工しやすい(大掛かりな重機が必要なく、鉄骨のような大きな資材の搬入が少ない)
- 建物荷重が小さい(地盤への負荷が少なく、耐震性を確保しやすい)
- デザインの自由度が高い(建築基準法を守れば、構造体の位置や高さをアレンジしやすい)
- 施工会社の選択肢が多い(工務店からハウスメーカーまで様々な規模の会社が施工できる)
- 環境に優しい(木材は製造・施工工程で消費するエネルギーが少ない)
デメリット
- 木部が腐朽したりシロアリ被害を受ける可能性がある(湿気が原因、耐震性に影響が出ることも)
- 気密性が低い(高気密住宅でも鉄筋コンクリート造と比べると劣る)
- 防音性が低い(気密性の低さと木材の比重が小さいことが理由)
- 仕上がりに差が出やすい(工業製品ではないため、職人の手腕によって出来栄えが左右されやすい)
鉄骨造住宅のメリット・デメリット
鉄骨造(S造)は木造ほどではないものの、主に防火規制の厳しいエリアに建てる住宅、店舗併用住宅へ採用されています。
鋼材厚さが6mm未満の「軽量鉄骨造」と、6mm以上の「重量鉄骨造」に分類されますが、どちらにも、木造とは全く異なるメリットとデメリットがあります。
メリット
- 開放的かつ間取りの自由度が高い(柱や壁を減らせる)
- 工期が短い(構造体を工場生産するため)
- 品質ムラが少ない(構造体が工場で作られる工業製品)
- 火災保険の費用が安くなる(木造と設定されている構造級が異なる)
- 耐震性が高い(地震時の倒壊リスクが低い)
デメリット
- 材料費が高い(木材よりも鋼材の方が高い)
- 工事費が高い(材料が重いため、施工効率があまり上がらない)
- 狭小地や前面道路が狭い土地で施工しづらい(重機が必要で大きな資材の搬入が多い)
- 入念な地盤改良が必要(建物荷重が大きいため)
- 施工会社の選択肢が少ない(施工できる会社が限定される)
- 大掛かりな断熱工事が必須(鋼材は熱を通しやすい)
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木造と鉄骨造の特徴比較
木造住宅と鉄骨造住宅にはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあり、それらを客観的に比較するのは難しいですよね。
そこで、ここでは特に気になる住宅性能や価格を詳しく比較します。
耐震性
「木造と鉄骨造はどちらが地震に強い」これは多くの方が気になるポイントですよね。
地震への強さだけで言うと、鉄骨造の方が有利です。
なぜなら、木材よりも鋼材の方が強度があり、材料の粘り強さや弾性を表すヤング係数が高いためです。
材料 | ヤング係数 |
---|---|
鋼材 | 205,000[n/mm²] |
木材 | 7,000~12,000[n/mm²] |
ただし、建築費用や地盤改良工事に費用がかかるため、耐震性を確保する上でのコストパフォーマンスは木造よりも劣ります。
木造も設計施工技術や材料の品質が進化しており、免震・制振技術を取り入れた事例が増えているため、大規模地震にも耐えられる可能性の高い家は建てられます。
耐久性
雨漏りなどによって建物の耐久性が落ちるリスクは、木造の方が少々高めです。
なぜなら、木造は雨漏りなどによって木部が腐朽したりシロアリ被害を受ける可能性があり、それが耐久性(建物強度)の低下に直結するためです。
一方、鉄骨造は鋼材が湿気の高い環境にさらされるとサビが発生します。
しかし、重量鉄骨造に使われる鋼材の厚さは6mm以上もあるため、サビによって耐久性が低下するまでにはかなりの年月がかかります。
ただし、やはり雨漏りなどを放っておけば鉄骨造でも深刻な事態になる可能性はありますので、木造・鉄骨造問わず、屋根や外壁、屋上のメンテナンスは欠かせません。
耐火性・防火性
鉄骨造は着火しにくいため、防火地域・準防火地域でも多く採用されますが、火災発生後に鋼材が550℃に達すると変形が始まり、900℃を超えると破断して崩壊するとされています。
一方、木材は着火しやすいものの、燃えると表面が炭化してそれ以上燃え進まなくなるため、崩壊するまでに時間がかかるとされています。
木造建築が火災時に少しでも長く耐久性を維持できるように、通常よりも太い(厚い)材料を採用する「燃え代(しろ)設計」を取り入れる事例も増えています。(参考:木を活かす建築推進協議会|防耐火設計に関すること)
つまり、簡単に言うと、鉄骨造は防火性が高く、木造は耐火性が高いということです。
ただし、法整備が進み、防火地域・準防火地域にも木造で家だけではなく中規模以上の建物を建てる事例が増えています。
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防音性
木造と鉄骨造の防音性を比較する際に重要となるのが、鉄骨造に用いられる鋼材厚さです。
重量鉄骨造には厚さ6mm以上の分厚い鋼材が使われるため、木造よりも防音性は高いでしょう。
一方、厚さ6mm未満(一般的には3〜4mm)の鋼材を用いる軽量鉄骨造と木造を比べても、防音性にそれほど違いはありません。
ただし、重量鉄骨造はコストパフォーマンスの面から2階建て住宅などにはあまりおすすめできません。
平屋や2階建ての家を建てる場合は、防音面で構造種別を選ばずに、防音サッシなどの採用を検討しましょう。
間取り・デザインの自由度
大きな窓や間仕切り壁の少ない家にしたい方には、構造体一つ一つで大きな荷重を支えられる「鉄骨造」がおすすめです。
ただし、勾配天井やスキップフロアなど、天井や床の形状・レベルに変化をつけやすいのは「木造住宅」です。
また、鉄骨造は構造体が太く居住空間を圧迫するため、狭小住宅にはあまり適していないと言えるでしょう。
寿命(耐用年数)
寿命を比較すると、木造と鉄骨造で大きな差はありません。
国税庁が定める住宅の法定耐用年数は、「木造22年」「鉄骨造19~34年(鋼材厚さによって違う)」ですが、これはこれまでの建築技術を踏まえた想定寿命であり、30年近く更新されていないのが実情です。
国土交通省が公表しているデータによると、長期優良住宅グレードの高品質木造住宅の期待耐用年数は「100年超」、一般的なグレードの住宅でも「50〜60年」、2011年調査では平均寿命が「64年」とされています。(引用:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新による価値向上について)
鉄骨造住宅も、一般的には寿命50〜60年、定期的にメンテナンスやリノベーションを繰り返せば、100年以上住み続けることは決して無理ではありません。
工期
木造住宅は、在来軸組工法と枠組壁工法によって工期が変わりますが、同じ規模の住宅を鉄骨造で建てた場合と比べると工期は少々長くなる可能性があります。
構造 | 工期目安 |
---|---|
木造 (在来軸組工法) | 約4~6ヶ月 |
木造 (枠組壁工法) | 約4~5ヶ月 |
鉄骨造 | 約3~5ヶ月 |
ただし、鉄骨造の場合はより強固な地盤補強が必要なので、地盤改良工事に日数がかかる可能性があります。
そのため、構造種別を問わず、余裕を持ったスケジュール組みが重要です。
価格
国土交通省の調査によると、2023年に建てられた一戸建て住宅(持ち家)の建築コストは以下の通りです。
構造種別 | 建築費 (一棟当たり) | 施工単価 |
---|---|---|
木造住宅 | 2551.7万円 | 22.6万円/㎡ |
鉄骨造住宅 | 4065.3万円 | 32.5万円/㎡ |
上記金額を見てもお分かりの通り、木造と鉄骨造を比較すると、1.5倍程度の価格差があります。
そのため、性能と価格のバランスを見て、ご予算やライフプランに合う構造種別を選ぶことが重要です。
アイホームズは、東京都墨田区を拠点に、木造住宅と重量鉄骨造住宅の施工実績が豊富ですので、どちらか迷っている方はお気軽にご相談ください。
木造+鉄骨造の“混構造”というハイブリッドな考え方も
住宅にも、木造と鉄骨造、もしくは鉄筋コンクリート造を組み合わせた「混構造」の事例が増え始めています。
敷地の条件や建物の用途や規模を考慮した場合、全ての条件が木造に適さない場合などに採用されます。
- 立面混構造:1階を非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造)、2階以上を木造にする方法
- 平面混構造:同じ階で木造と非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造)を組み合わせる方法
住宅で採用されるのが「立面混構造」です。
例えば、1階を事務所や店舗、駐車場にしたい場合、鉄骨造を採用すると間仕切りや柱のない大空間を実現できます。
2階以上を木造にすれば、すべて鉄骨造にするよりも、建物荷重を軽くでき、建築コストを抑えられる点もメリットです。
このように、木造・鉄骨造のメリットをうまく融合させられるのが「混構造」です。
木造住宅・鉄骨造住宅で迷っている方からよくいただく質問
ここでは、マイホームを木造で建てるか鉄骨造で建てるか迷っている方から多くいただく質問を紹介します。
Q.「戸建住宅の木造率・鉄骨造率はどのくらい?」
2013年と2023年の国土交通省による統計によると、戸建住宅(持ち家)の構造種別割合は以下の通りです。
年次 | 木造率 | 鉄骨造率 |
---|---|---|
2013 | 85% | 14.8% |
2023 | 88.6% | 10.3% |
この10年間で木造率が上昇し鉄骨率が減少していますが、これは耐火木造建築に関する法整備や、政府による木材利用促進の動きが関係していると考えられます。
Q.「木造と鉄骨造の見分け方は?」
外から見ると、5階建て以上の建物は木造ではなく鉄骨造の可能性が高いでしょう。
ただし、5階以上の建物は、鉄筋コンクリート造(RC造)もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合もあります。
大きな開口部が多いかどうかもチェックポイントです。
木造の場合は、コーナー窓や吹き抜け全面窓のような大きな窓を採用する事例はかなり限られます。
また、室内に入り、壁や天井に柱型や梁型が出ていると、木造ではなく鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造いずれかです。
Q.「鉄筋コンクリート造も選択肢に入れるべき?」
木造・鉄骨造だけではなく、鉄筋コンクリート造の家も選択肢へ入れている方もいるかもしれません。
鉄筋コンクリート造は、木造・鉄骨造と比べて「耐震性・気密性・遮音性・耐火性」に優れていますが、工期が長く、間取りの自由度が下がってしまう点は注意しましょう。
また、雨漏りによってコンクリート内に水が侵入すると、鉄筋が錆びて膨張し、表面のコンクリートを破壊してしまうデメリットもあります。
コストは、木造よりも高く、鉄骨造と同等程度なことから、戸建住宅の場合は木造・鉄骨造を主な選択肢としている方が多いです。
まとめ
木造住宅と鉄骨造住宅には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。
そのため、家の構造を決める際は、土地の条件・性能・価格・工期など、いくつもの視点でご要望に合うかを確認しましょう。
「プロの意見を聞いて決めたい」という方は、木造も鉄骨造も両方手掛ける建築会社へ相談することが重要です。
どちらにも偏らず、公平で正確なアドバイスをもらえます。
アイホームズは、昭和43年創業以来、東京23区内で「高気密高断熱+高耐震」の家をリーズナブルな価格で数多く手がけてきた実績があります。
ずっと安心して住み続けられる家を建てたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社 アイホームズ
FAX:03-3613-6149
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