メンテナンスを考える~ライフサイクルコストとは~
皆さんこんにちは、五十嵐です。
住宅購入を考える時、どうしても
「住宅の価格」に目が行きます。
とくに「坪単価」がいくらか?と
単純に判断してしまいがちです。
確かに、購入時点での支払い可能額がありますから、
「建設コスト」には十分注意を払わなければなりません。
しかし「いくらかかるか?」だけでなく
「どんな仕様を使うのか?」ということも、
とても大切になってきます。
設計段階で決めた「仕様」は、
見た目の質感や快適性だけでなく将来、
家計から出ていくお金にも影響を与えるのです。
◎外装材の耐用年数は?
「五十嵐さん、大手建材メーカーのA社はとんでもないよ!」
入社が終わり、施主と工務店の1社に立ち寄った時、
その工務店社長から1枚のパンフレットを渡されました。
表紙には「窯業系サイディング維持管理のしおり」
と書かれています。
「どうしたんですか?」と
私が尋ねてみると・・・・・
その工務店が6年前に建てた家の
外装材がA社のサイディングで、
外装材の伸縮により、シーリング部分の
剥離が発生しているそうです。
「まだ築6年なのに、メーカーの方は
保証しないっていうんだよ!」
現場で計測してみると、建物の長手方向で
8ミリ縮んでいたそうです。
そしてメーカー側から渡されたのが
上記のパンフレットです。
■点検はお客様ご自身で!!
■メンテナンス工事は建築された住宅会社・工務店様にご相談を!!
メーカーの保証や責任はどこにも書かれていません。
今、住宅を購入する人の多くは
サイディングなどの「工業製品」を使うと、
メンテナンスが楽で汚れも目立たないと思っているでしょう。
最近では、光触媒を利用したコーティングがされ、
汚れも雨で洗い流すことができるという商品も出てきました。
しかし、実際に施工後の経年変化で不具合が生じても、
メーカーは「自主点検」し
「施工者に相談しなさい!」ということなのです。
では、サイディングなどの外装材を
メンテナンスするときの目安とは何か?
『日本窯業外装材協会』発行の
パンフレットで見ていきましょう。
※上記協会は、日本の大手サイディングメーカー等
16社が加盟しています。
まず、塗装表面から・・・・・
サイディングは、タイル調などさまざまな
模様がありますが、基本的には表面を塗装しています。
「塗装」だから塗り替えが必要ですよね。
メンテナンス期間の目安として、
「5~10年で再塗装」とあります。
10年~15年で「再々塗装」、
以降5年ごとのスケジュールになります。
35年ローンを組んだ家でしたら、
6回塗装しなければならない計算です。
半分としても、3回塗り替えることになりますが、
実際住宅の塗装をする時「足場架け」も
必要になってきます。
40坪程度の住宅でも、足場を架けて
汚れないように養正をして、外壁だけでなく
木部の塗装などもやり直します。
恐らく150万~200万円程度は予算化する
必要があります。
※もちろん目安なので、塗装の種類や地域によって異なります。
そして、シーリングの劣化やひび割れも生じてきます。
※「シーリング」とは、材料同士の継ぎ目を埋める
ゴム状の材料です。
シーリングに関しては、メンテナンス時期の
目安は書かれていません。
築後すぐに「程度により部分打ち替え、
全面打ち替え」と記載されています。
赤外線に当たったプラスチック製品が、
数年で劣化するように、シーリングも
数年で劣化し弾力性がなくなります。
外壁材の伸縮や、大きな地震があれば、
すぐ剥離する可能性があります。
窯業系サイディングは、現在新築住宅の75%を
占めると言われています。
メーカーは「売るとき」には、
耐用年数が長いような話をします。
しかし、いざ不具合が出た途端「維持管理のしおり」
を提示するのです。
「10年ごとに100万円程度の
メンテナンス費用は必要ですよ♪」
(そうはっきりと書いてはいませんが・・・・)
既存住宅でサイディングを張ると、
重荷は2トン程度となるそうです。
だとすると、耐震診断と耐震補強も必要となります。
そして耐震補強をして張り替えるとなると・・・
塗り替えの倍近くかかります!
しめて約400万円の出費!?
嘘のようですが、本当の話です。
◎光熱費比較
入居後に考えなければならない
もうひとつのコストは、やはり『光熱費』。
テナントビルなどの計画では、
エレベーターなどの保守管理もあるので、
新築時に「ライフサイクルコスト」も計算します。
住宅取得時のコストを『イニシャルコスト』
そして、実際に住み始めて掛かるコストを
『ランニングコスト』と呼びます。
定借住宅のように50年後に
解体しなければならない場合は、
解体費用や廃棄費用も計算する必要があります。
これら諸々を総じたものが建物の『ライフサイクルコスト』です。
特に、地球温暖化などの問題もあり、
住宅にも省エネルギー性が求められてきました。
つまり住宅内で使うエネルギー消費を
抑えるということです。
エネルギー消費は大きく以下の3つの点を
考える必要があります。
1.断熱性能を高め、冷暖房の使用の少ない住宅をつくる
⇒高気密・高断熱化・屋上緑化など
2.給湯を中心とした熱源を、高効率な機器から選ぶ
⇒オール電化(エコキュートなど)、
家庭用コジェネシステム(ガス)など
3.節電を心掛ける
⇒不要なテレビを見ない、電気ポットなどはマメに切るなど
3については、入居者の心構えや努力によるものですが、
1~2については、プロが建築段階で助言し、
施主が選択できるものです。
建築時に「安い」ことだけを求めると、
そのツケは施主が負担します。
では、光熱費を抑えるために、
どんな方法があるのか・・・・?
一度私の相談者で、断熱材や工法による
光熱費比較をしました。
「省エネ」で光熱費を下げることは、
誰でも歓迎でしょう。
今さら、便利な生活を我慢して、
昔のように「ローエネルギー」の生活に戻るには、
多くの人が抵抗ありますよね・・・・。
なぜか住宅には「ローコスト」が求められます。
本当に「低い」ことが望まれているのでしょうか?
むしろ時間や経費の無駄を省く「省コスト」が
望まれていると思うのですが・・・・。
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