【木造耐火構造の建物】定義とメリット・デメリット、価格、補助金について解説
- 防火地域にある建物を建て替えたい
- 出来るだけコストを抑えてアパートを建てたい
このようにお考えの方におすすめするのが、木造耐火構造の建物です。
こちらの記事では、耐火構造と耐火建築物の定義や関連する告示・法令から、準耐火建築物・省令準耐火建築物との違い、耐火建築物を木造にするメリット・デメリットを解説します。
そのほか、木造耐火建築物の新築・建て替えに関する補助金も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
■ 木造耐火構造の建物はコスト面や生活面、環境面においてメリットがあります。
■ 木造耐火構造の建物を設計施工できる建築会社は限られます。
■ アイホームズは墨田区を中心に東京23区で耐火建築物の認定を受けられる木造注文住宅を手掛けています。
目次
耐火構造と耐火建築物とは|関連告示と建築基準法における定義・仕様
耐火構造とは、建設省告示第1399号「耐火構造の構造方法を定める件」にて基準と仕様が定められており、主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段など)が一定時間の間火災に耐えられる仕様であることが求められます。
似た言葉に「耐火建築物」がありますが、こちらは耐火構造に加えて外壁や開口部などに関する防火性能も必要です。
耐火建築物の定義は建築基準法第9条の2項にて以下のように定められています。
- 主要構造部が耐火構造であること。
- 主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がない部分以外も耐火構造であること。
- 主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がない部分以外も屋内で発生が予測される火災を受けても火災終了まで耐えられること。
- 当該建築物の周囲において発生する通常の火災を受けても火災終了まで耐えられること。
- その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備に国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを採用すること。
耐火建築物の基準をクリアする建物は、これまで鉄筋コンクリート(RC)造・鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造・鉄骨(S)造が主でしたが、近年は建築材料や建築工法の技術革新によって、木造耐火建築物が増えています。
>【おすすめコラム】地震に強い家の構造|木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造どれがいい?特徴を徹底比較
>【おすすめコラム】木造住宅と鉄骨造住宅どちらがいい?性能・価格の違いを徹底比較
耐火建築物と準耐火建築物・省令準耐火建築物の違い
>都内初!耐火木造4階建て。造作ワークスペースのある免震住宅。(中央区)
耐火建築物を知る上で同じくキーワードとなるのが、「準耐火建築物」と「省令準耐火建築物」です。
準耐火建築物との違い
準耐火建築物とは、耐火建築物よりも火災に耐えられる時間は短いものの、一定の火熱に耐えられる構造を持つ建物です。
- 主要構造部が準耐火構造であること。
- 主要構造部が準耐火構造でない場合は、それと同等の準耐火性能を持つ防火措置をとること。
準耐火構造の基準と仕様は建設省告示第1358号「準耐火構造の構造方法を定める件」にて明記されています。
耐火建築物と準耐火建築物の違いは、「構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じない」時間の長さです。
対象の主要構造部 | 耐火建築物※ | 準耐火建築物 |
---|---|---|
壁(耐力壁) | 1時間 | 45分 |
柱 | 1時間 | 45分 |
床 | 1時間 | 45分 |
梁 | 1時間 | 45分 |
屋根 | 30分 | 30分 |
階段 | 30分 | 30分 |
※「最上階から数えた階数が2以上4以内の階」の場合で、「最上階から数えた階数が5以上で9以内の階」はさらに高い耐火性が求められます。
上記の時間を確保できることを公的に証明するために、主要構造部などには国土交通大臣の認定を取得した「不燃材料・準不燃材料・難燃材料」を使用する必要があります。
省令準耐火建築物との違い
耐火建築物と準耐火建築物は建築基準法で定める基準をクリアした建物ですが、それに加えてフラット35を運営する住宅金融支援機構が独自に定める基準へ適合する住宅が「省令準耐火建築物」です。
以下の住宅が認定を受けられます。
- 省令準耐火構造の仕様に基づき建設された木造軸組工法の住宅又は枠組壁工法(2×4)住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認したプレハブ住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認した住宅または工法
省令準耐火建築物の防火性能は建築基準法における準耐火構造と同等です。
耐火建築物に「しなくてはいけない」ケース|防火・準防火地域、建物規模との関係
建物を耐火建築物にしなくてはいけないかどうかは、その建物の敷地があるエリアと規模によって決まります。
- 敷地が防火地域内にあり、建物規模が地階を除き階数3以上もしくは延床面積が100㎡以上の場合(2階建て以下・延床面積100㎡以下は準耐火建築物以上の性能が必要)
- 敷地が準防火地域内にあり、建物規模が地階を除き階数4以上もしくは延床面積が1,500㎡以上の場合
- 敷地が新防火地域※内にあり、階数4以上もしくは延床面積が500㎡以上の場合(それ以外の建築物は準耐火建築物以上の性能が必要)
- 敷地が防火地域外にあり、①〜③のいずれかに該当する場合
①地階を除き、階数4以上の建物
②延べ床面積が1,500㎡を超える建物
③所定以上の階数・規模を有する特殊建築物※
※特殊建築物:不特定多数が利用する公共性の高い建物で、用途や規模は建築基準法第2条第1項第2号にて規定されている。
※新防火地域:東京都建築安全条例第7条3第1項に規定する区域

※延床面積50㎡以内の平屋建てなど一部例外は規定の対象外となる場合があります。詳しくは管轄省庁や所管行政へご確認ください。
防火地域や準防火地域は街の中心部や駅・幹線道路の近く、建物密集地が指定されます。
そのため、東京23区などに建物を建てる場合、耐火建築物もしくは準耐火建築物の性能が求められる可能性は決して低くありません。
耐火建築物を木造で建てる方法
>準耐火木造2階建て+小屋裏収納+屋上付き 免震住宅(台東区千束)
少し前まで「耐火建築物=鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨造(S造)」というイメージが強く、木造を採用する事例は限られていました。
ところが、2019年の建築基準法改正以降は、規定対象外の小規模建築物でも耐火建築物・準耐火建築物にすることで建ぺい率の10%緩和が受けられるようになり、木造の耐火建築物が一気に増えています。
>【おすすめコラム】耐火建築物・準耐火建築物の基礎知識と建蔽率緩和について解説
ただし、木造で耐火建築物にするためには以下の方法を取る必要があります。
耐火構造に関する告示の仕様にする
建設省告示第1399号「耐火構造の構造方法を定める件」が2018年に一部改正され、石膏ボートを用いた木造の耐火主要構造部の仕様が明確化されました。
そのため、木造で耐火建築物を建てる際は告示の仕様に沿った設計が必要になります。
主要構造部をメンブレン型(被覆型)耐火構造にする
戸建住宅に多く用いられる木造軸組構法や枠組壁工法において、主要構造部の木材を石膏ボードなどで覆い耐火性能を確保する工法である「メンブレン型(被覆型)耐火構造」を採用するケースもあります。
認定を受けた石膏ボードを用いて適切な厚さで構造部材を覆うことで、耐火建築物として認定を受けられます。
国土交通省の認定を受けた工法を用いる
実験や検証を経て「耐火性能がある」と国土交通大臣より認定を受けている工法を用いることで、木造耐火建築物を実現できます。
告示で定めた仕様を取り入れたり被覆端の耐火構造にするよりも省施工・省コストになる可能性がある点がメリットです。
ただし、対応できる建築会社は限られるため、会社を選ぶ際は注意しましょう。
アイホームズの“国土交通大臣認定1時間耐火構造”木造注文住宅「ひのき」
木造耐火建築物のメリット|価格・工期・断熱性など
木造の耐火建築物が増えている理由は、ずばりコスト面や利便性、環境配慮性など様々な観点からのメリットにあります。
他の構造より建築費用を抑えられる
木造耐火建築物は一般的な非耐火建築物と比べると10〜30%ほどコストが高くなります。
しかし、それでも非木造(RC・SRC・S造)と比べると建築費用を抑えられます。
構造種別 | 全国平均単価 | 東京平均単価 |
---|---|---|
木造(非耐火) | 68.3万円/坪 | 71.6万円/坪 |
木造(耐火) | 75.1〜88.8万円/坪 | 78.8〜93.0万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 100.3万円/坪 | 127.0万円/坪 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 104.9万円/坪 | 115.2万円/坪 |
鉄骨造 | 97.0万円/坪 | 116.8万円/坪 |
参考:国税庁|地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和6年分用】
また、木造は非木造の構造より建物荷重が少ないので、地盤にかかる負担が少なく地盤改良の費用を抑えられる点もポイントです。
アイホームズが採用するスーパージオ工法は、4階建てでも杭打ちをせずに耐震性・免震性の高い建物を建てられます。
>【おすすめコラム】地盤が緩い土地とは|地名などの特徴で見分けるポイント・マイホーム新築時の地震対策など解説
>【おすすめコラム】木造住宅は「地震に弱い」って本当?高耐震な家のポイントと鉄骨造との比較
RC造・SRC造より工期が短い
木造はコンクリートの打設や乾燥期間を要するRC造・SRC造と比べると、工期が短い点も重要なメリットと言えます。
近年は木材を工場で加工するプレカットが原則で、現場ではそれを組み上げる作業のみになる点もポイントです。
- 木造(軸組工法) :3〜5ヶ月
- 木造(壁式工法): 3~4ヶ月
- S造:3〜5ヶ月
- RC造:5~6ヶ月
- SRC造:5~6ヶ月
※建物の規模や敷地条件により上記期間に当てはまらない場合もあります。
工期を短縮できると、工事にかかる人件費だけではなくその間の仮住まい費用などの諸経費も削減できます。
非木造の建物より固定資産税を抑えられる
新築住宅などの固定資産税は建物の固定資産税評価額から算出されます。
固定資産評価額は再建築価格(建て替えにかかる費用)が根拠となるため、他の構造よりも建築費用の安い木造の方が家屋にかかる税額も安くなるということです。
建物(家屋)の固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準額)× 固定資産税率(標準税率1.4%)
建物(家屋)の固定資産税評価額=再建築価格 × 経年減点補正率
また、家屋の固定資産税は築年数が経つほど経年減点補正率によって税額が徐々に低くなるのですが、この経年減点補正率も木造と非木造では異なります。
築年数 | 木造の経年減点補正率 | 非木造の経年減点補正率 |
---|---|---|
1年 | 0.80 | 0.9579 |
5年 | 0.64 | 0.8569 |
10年 | 0.50 | 0.7397 |
20年 | 0.26 | 0.5054 |
30年 | 0.20 (築27年以上は補正率一定) |
0.3059 |
参考:法務省|経年減価補正率表
つまり、築20年も経つと木造の建物にかかる固定資産税額は非木造建物のおよそ半額になるということです。
木造でも火災保険料が安い
火災保険料を決めるのが建物の「構造級別」です。
構造級別は、木造・コンクリート造・鉄骨造などの構造種別や、耐火建築物・準耐火建築物などの構造性能によってグレードが分けられます。
構造の種類 | 住宅 | 非住宅 |
---|---|---|
RC造・SRC造(耐火構造)の集合住宅 | M構造 | ー |
RC造・SRC造(耐火構造)の戸建住宅・独立した建物 | T構造 | 1級 |
S造の戸建住宅・独立した建物(準耐火構造) 省令準耐火建築物 |
T構造 | 2級 |
木造(非耐火)の建物 | H構造 | 3級 |
保険料は「M構造<T構造(1級)<T構造(2級)<H構造(3級)」の順で高くなりますが、木造でも耐火構造・準耐火構造の条件をクリアしていれば「T構造(1・2級)」としてみなされます。
狭小地・密集地などの都心部でも建てやすい
RC・SRC・S造を施工する際には、大型クレーン車やコンクリートミキサー車などの重機・工事車両が必要になるため、隣家との距離が近い土地や前面道路が狭い土地では施工できない(施工費が高くなる)可能性は決して低くありません。
それに対して木造は2tトラックなどで材料を搬入できるため、非木造よりも新築のハードルが低いと言えます。
騒音・振動など近所トラブルのリスクを抑えられる点もポイントです。
そのため、都心部などでは敷地のサイズや周辺環境で木造を選ぶ事例が増えています。
非木造より断熱性のコストパフォーマンスが高い
木材は、コンクリートや鋼材と比べて熱伝導率(熱の伝わりやすさ)・容積比熱(温まりやすさ・冷めやすさ)が低いという特性を持ちます。
数値が低いほど、室温が外気温の影響を受けにくいということです。
材料の種類 | 熱伝導率 | 容積比率 |
---|---|---|
無垢材 | 0.12 | 520 |
木質系合板 | 0.16 | 720 |
鋼材 | 55 | 3,600 |
コンクリート | 1.6 | 2000 |
非木造の建物も断熱工事によって高断熱にできますが、木造は構造体そのものが熱を伝えにくいため、より高いコストパフォーマンスを実現できるのです。
断熱性アップは室内を快適にするだけではなく、ヒートショックなどの健康リスクを抑えて光熱費削減ももたらします。
短期間で減価償却できる
税法上、「資産の価値は経年によって減っていく」ことが原則とされています。
そのため、建物(固定資産)の新築にかかった一時的な支出を、法的に定めた耐用年数(=減価償却期間)で分割して経費計上できます。
構造種別 | 事務所 | 住宅 |
---|---|---|
木造 | 24年 | 22年 |
RC造 SRC造 |
50年 | 47年 |
S造 (鉄骨厚さが4mmを超える場合) |
38年 | 34年 |
木造は非木造の場合と比べて減価償却期間が短いため、短期間で節税効果を圧縮できます。
環境に優しい・非木造よりLCCO2の量が少ない
木造は非木造の場合よりも建物の材料製造・新築・解体・リサイクルと生涯にわたる二酸化炭素排出量(LCCO2)が少ないため、環境に優しい構造です。
また、木材を利用すると森の木々が定期的に植林・伐採されるため、森林全体が活性化してより多くの二酸化炭素を吸収することもわかっています。
これらのことから、国土交通省は2010年に「脱素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:木材利用促進法)」を制定し、木造の推進へ積極的に取り組んでいます。
参考:林野庁|環境への配慮、国土交通省|住宅・建築物に係る二酸化炭素の排出量及び削減量について
>【おすすめコラム】「木造で耐火建築物にする」7つのメリットや仕様について解説
木造耐火建築物のデメリット・注意点と解決策
耐火建築物を木造で建てるメリットがある反面、事前に知っておいていただきたいデメリットもあります。
それは、耐火構造にすることで居住空間が一般的な木造よりも狭くなる点です。
なぜなら、耐火構造にするためには耐火皮膜にするなどの工夫が必要になるためです。
狭小地に木造耐火建築物を建てる場合は、戸建住宅でも3〜4階にする事例は珍しくありません。
ただし、木造耐火建築物でさらに3階・4階の住宅を設計施工できる建築会社は限られます。
アイホームズは良質な国産ヒノキを用いた4階建てまでに対応できる耐火構造の注文住宅を手掛けています。
「最大1億円の免震保証付」「制振オプション選択可能」「高い断熱性を発揮する発泡断熱材」など、高性能な住宅を“どこよりも”リーズナブルな価格で提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
アイホームズの“国土交通大臣認定1時間耐火構造”木造注文住宅「ひのき」
東京では耐火木造建築物の新築に使える補助金も
東京では街の防災性を高める目的で東京都都市防災不燃化促進事業に取り組んでおり、都市計画道路の沿道30m以内に入る範囲を「不燃化促進区域」に指定しています。
不燃化促進区域内にある建物を木造耐火建築物へ建て替える場合は、補助金や助成金の対象となる可能性があるため、事前に詳細をチェックしておきましょう。
補助金・助成金制度は自治体ごとに実施しています。
アイホームズが「大手ハウスメーカーより30%安く建てられる理由」
まとめ
木造耐火建築物にはコスト面や施工面においてメリットがあります
ただし、設計施工はどの会社でもできるという訳ではありません。
さらに3階建・4階建の木造耐火建築物に対応できる建築会社は限られます。
アイホームズは、昭和43年創業以来、東京23区内で「高気密高断熱+高耐震」の木造耐火建築物をリーズナブルな価格で数多く手がけてきた実績があります。
狭小地への施工実績も豊富であり、アパートの新築・建て替え・リフォームいずれも対応可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社 アイホームズ
FAX:03-3613-6149
その他のコラム