「木造で耐火建築物にする」7つのメリットや仕様について解説
東京都内、特に人口密度の高い23区内においては、ほとんどの地域が防火地域または準防火地域、2021年に制定された新防火地域のどれかに指定されています。
指定地域で住宅を建てる際に知っておかなくてはいけないのが「耐火建築物」についてです。
“耐火”と聞くと、鉄筋コンクリート造や鉄骨造をイメージする方が多いかもしれませんが、実は“木造”で建てることもできます。
そこで、今回は耐火建築物に関する基礎知識や、木造で建てる場合のメリット・仕様について、詳しく解説します。
都心部でこれからマイホーム計画を始める方は、ぜひ参考にしてください。
■ 認定を受けた材料を使って仕様条件を満たしていれば、木造でも耐火建築物は建てられます。
■ アイホームズは、昭和43年創業以来、都内を中心に数多くの木造耐火建築物・準耐火建築物を手がけてきた実績があります。
目次
耐火建築物とは?建築基準法の規定は?
令和3年中に東京都内で発生した火災件数(放火を除く)は、なんと3,939 件にものぼり、人口密度の多い23区内での発生率が高いことは明らかです。
そして、火災(自損行為を除く)によって 72 人の方が亡くなっており、そのうち65歳以上の方の割合は77.8%とほとんどを占めています。(参考:東京消防庁|数字で見る令和3年中の火災)
その理由のうちの一つが、“逃げ遅れ”。
火災が発生してから避難するまでの時間を確保できないことにあると考えられます。
また、気付かぬうちに隣家などから延焼し、逃げ遅れるケースも少なくありません。
そこで設けられたのが、「防火地域・準防火地域」。
都市計画法(第9条)で「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」とさられており、す建物が密集している市街地において、火災の延焼を防ぎ、避難や消火活動がスムーズに行えることが目的です。
それに加えて、2021年に改正された東京都建築安全条例によって新たに設けられたのが「新防火地域」です。
こちらは、「既存建築物の不燃化を促進し木造密集地域の再生産を防止する」ことを目的としています。
防火地域
3階以上もしくは延床面積が100㎡以上の場合には、「耐火建築物」としなくてはならず、2階建て以下・延床面積100㎡以下の場合でも、「準耐火建築物」以上の性能がなくてはいけません。
準防火地域
地階を除いて4階以上もしくは延床面積が1,500㎡以上の場合に、「耐火建築物」としなくてはいけません。
地階を除いて3階以下・延床面積が500㎡以下であれば、条件次第で一般的な木造建築物を建てることができます。
新防火地域(新たな防火規制区域)
4階以上もしくは延床面積が500㎡以上の場合には、「耐火建築物」としなくてはならず、それ以外の建築物でも「準耐火建築物」以上にしなくてはいけません。
ここでキーワードとなるのが、「耐火建築物」と「準耐火建築物」です。
どちらも、建築基準法で定められた主要構造部(柱、梁、床、屋根、壁、階段など)が耐火性能を持つ仕様でなくてはいけません。
主要構造部が火に強いと、建物内にいる人が避難するまでの時間を確保でき、近隣へ延焼防止につながるためです。
耐火建築物・準耐火建築物の違いは、「構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じない」までの時間長さです。
【耐火建築物】 (最上階から数えた階数が2以上4以内の階) | 【耐火建築物】 (最上階から数えた階数が5以上で9以内の階) | 【準耐火建築物】 | |
内外壁 (耐力壁部分) | 1時間 | 1.5時間 | 45分 |
柱 | 1時間 | 1.5時間 | 45分 |
床 | 1時間 | 1.5時間 | 45分 |
梁 | 1時間 | 1.5時間 | 45分 |
屋根 | 30分 | 30分 | 30分 |
階段 | 30分 | 30分 | 30分 |
耐火建築物は、「火災時に建物が崩壊せず、自立し続ける」建物、準耐火建築物は、「火災時にゆっくり燃えるが、一定の時間は崩壊しない」建物です。
避難時間を確保できることを証明するためには、該当する部分に国土交通大臣が認定した「不燃材料・準不燃材料・難燃材料」を使わなくてはいけません。
木造の耐火建築物はどのくらいある?メリットは?
少し前まで「耐火建築物=鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨造(S造)」が当たり前でしたが、近年は国土交通大臣の認定を受けた建築材料が増えたこともあり、木造によるものも増えています。
一番のきっかけは、2000(平成12)年の建築基準法改正で、耐火性能が明確に規定かされ、条件さえ満たしていれば木造でも建築が可能となったのです。
2019(令和元)年の建築基準法改正によって、準防火地域内の小規模建築物でも耐火建築物・準耐火建築物とすれば、建蔽率(建ぺい率)の10%緩和が適応されることとなったのも木造化が進んだ大きなきっかけと言えるでしょう。
〈関連コラム:耐火建築物・準耐火建築物の基礎知識と建蔽率緩和について解説〉
実際に、一般的な木造軸組構法を用いて耐火建築物としての認定を受けた住宅は、2006年からと2016年で70倍にまで増加しています。
では、なぜこれほどまでに木造による耐火建築物が増えているのでしょうか?
それ理由は、7つのメリットがあるからです。
メリット① コストが安い
木造は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)と比較すると、構造体がとても軽量なため、基礎への負荷が小さく抑えられます。
そのため、配筋やコンクリートの量も少なく済むため、結果的に大幅なコストダウンにつながります。
国産木材を使えば、為替変動や世界の情勢に左右されずに、安定した価格で材料を入手できるため、材料費の面でも有利と言えるでしょう。
メリット② 工期が短い
材料の重さは、コストだけではなく施工効率にも大きく影響します。
軽ければ軽いほど、1日に施工できる面積が増えるのです。
また、コンクリートに不可欠な乾燥期間が必要なく、プレカットによって工場で加工された材料を使えば、工期を大幅に短縮できます。
メリット③ 狭小地でも施工しやすい
RC造やS造を施工する際には、大型クレーンやコンクリートミキサー車などの重機や工事車両が必要です。
そのため、住宅密集地で前面道路が狭い場合や、土地そのものが狭小であると施工のハードルが高くなってしまいます。
一方、木造は2tトラックなどで材料を搬入できるため、比較的どの地域・土地でも柔軟に対応することができるのです。
メリット⑤ 断熱性が高い
木材は、他の建築材料と比べて熱伝導率・容積比熱が低いという特性を持ちます。
熱伝導率とは“熱の伝わりやすさ”、容積比熱は“温まりやすさ・冷めやすさ”。
数値が少ないほど、外的な温度の影響を受けにくいことを意味します。
金属やコンクリートと比べても、その差は明らかです。
熱伝導率 | 容積比熱 | |
天然木材 | 0.12 | 520 |
木質系合板 | 0.16 | 720 |
鋼 | 55 | 3,600 |
アルミニウム | 210 | 2,400 |
コンクリート | 1.6 | 2,000 |
石膏ボード | 0.22 | 830 |
熱伝導率・容積比熱の数値が低いということは、断熱性が高いということ。
そのため、光熱費削減や快適な室内環境を実現できます。
メリット⑤ 減価償却期間が短い
減価償却とは、税法上の基本的な考え方で、資産の価値は経年によってそ減ることを原則としています。
そのため、住宅などの固定資産へかかった支出を、決められた減価償却期間(法定耐用年数)で分割し、毎年経費計上できるのです。
減価償却期間が短いということは、一年で計上できる建設費用が多いということ。
そのため、一時的に多額な支出が発生しても、それを短期間で経費として処理できるのです。
それぞれの減価償却期間(法定耐用年数)は以下の通りで、木造が明らかに短いことが分かります。
- 木造建物(事務所):24年
- 木造建物(住宅):22年
- 鉄筋コンクリート造(事務所):50年
- 鉄筋コンクリート造(住宅):47年
(「国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表」より抜粋)
メリット⑥ 木造でも火災保険が安くなる
火災保険の保険料を算出する際に関連するのが、建物の「構造級別」です。
構造級別は、木造・コンクリート造・鉄骨造などの構造種別や、耐火建築物・準耐火建築物などの構造性能によって「M構造」「T構造」「H構造」に分類されます。
ここで大きなポイントとなるのが、木造建築物であっても、耐火建築物や準耐火建築物の条件を満たしていれば、「T構造」と判断されるという点です。
T構造と見なされれば、保険料は大幅に安くなります。
メリット⑦ 環境に優しい
政府は今、積極的な「木材利用の促進」に取り組んでいます。
なぜなら、木材を利用することはCO2排出量抑制につながるからです。
木材を使うことは、「伐って、使って、植えて、育てる」という人工林のサイクルの一部。
二酸化炭素(CO2)の吸収や国土を災害から守るといった森林の持つ多くの働きを発揮させるためにも、木材を使って森を育てることは大切なことです。
人工林を伐って使うとともに、植えて育てることを進めていくことで、未来につながる森林の持続的なサイクルが保たれるのです。
(引用:林野庁)
特に、国産材を利用することで林業・製材業を守り、地方経済を活性化することにもつながります。
日本は、国土の2/3を森林が占めるため、森林資源の活用は、環境負荷抑制だけではなく、経済的なメリットも生み出すのです。
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【事例紹介】木造で耐火建築物にするための仕様は?
木造で耐火構造にする方法はいくつかありますが、住宅へ最も取り入れられているのが「被覆型」と呼ばれる仕様です。
これは、木造構造部分を耐火性能の高い材料で覆い、燃焼・炭化するまでの時間を長くする方法です。
以下のような特徴があります。
- 室内側から見て、木造主要構造部が隙間なく耐火材で覆われている。
- 柱は壁内に収め、梁は天井や床下に収め、耐火被膜の切れ目を作らない。
壁・柱・床・梁・階段・屋根に面する室内を、国土交通大臣の認定を受けた耐火性の高い材料で丸ごと包み込むことによって、室内で発生した火が延焼することを防ぎ、また近隣の火災によって受ける被害を最小限に食い止めることができます。
強化石膏ボードで耐火性を高め、さらに保温性の高い“アルミ箔張りガラス繊維クロス”や、高断熱性の高い“グラスウール10K”や“ALCパネル”を採用し、火災に強いだけではなく、快適な室内環境である点もポイントです。
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今まで数多くの木造耐火建築物を手がけてきた実績があります。
耐震性・断熱性・気密性にこだわりながらも、徹底的なコストダウンに努め、お客様の理想を叶えてきました。
数ある商品ラインナップの中でも、特におすすめなのが『ひのき耐火』。
国土交通大臣の認定を受けた1時間耐火構造の木造住宅で、4階建てまで建設可能です。
弊社の主な施工エリアである城東地区(墨田区、荒川区、台東区、葛飾区、江東区、足立区、江戸川区等)は、広範囲で防火地域や準防火地域に指定されている土地柄です。
その中でも高い耐火基準をクリアしています。
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まとめ|防火地域・準防火地域で家を建てる際は“木造”もご検討ください
都心ではほとんどの地域が防火地域や準防火地域、もしくは新防火地域に指定されています。
そのため、マイホームを建てる際には、耐火建築物や準耐火建築物にしなくてはいけません。
そこで多くの方がイメージするのは、RC造やS造でしょう。
しかし、近年はメリットの多い木造耐火建築物を選ぶ方が増えています。
ただし、その仕様や施工方法は通常の木造住宅と同じという訳にはいきません。
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