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擁壁を土地購入や新築時にチェックすべき理由

2021年03月10日

鉄筋コンクリート擁壁の外観

最近、ニュースでも耳にする擁壁(ようへき)。擁壁は、土地の購入、住宅の新築をする際に要チェックです。なぜなら、購入時の費用が数百万円も変わってくることがあるからです。意外と知られていない擁壁が土地や建物の売買に与える影響とは?擁壁とは何か、関係法令や、土地の購入時の擁壁のチェックポイントなどを解説します。ぜひ土地や新築等の際に参考にしてくださいね。

擁壁って何?

擁壁(ようへき)とは、高低差がある土地や崖の斜面の土砂が崩れないように土留めをした壁状の構造物です。コンクリート、ブロック、石などを用います。土地を造成して盛土や切土をする、崖の崩壊を防ぐために斜面を固める、道路と敷地の段差を解消するなどの「擁壁工事」という土木工事を伴います。

 

擁壁工事とは

高低差がある土地は自然災害の影響を受けやすいものです。建物の重量、地震の揺れ、豪雨時の雨水による水圧が地盤に負荷をかけると、その下にある斜面が崩れる危険性があります。そこで、斜面をできるだけ安定させ、様々な圧力に耐えられるような構造にする必要があるのです。擁壁は私たちが安全に生活するために必要な身近な土木建築物なのですね。

 

高低差2m以上の土地の場合は所有者に設置義務がある

近年の自然災害の増加により、大規模地震、記録的豪雨、老朽化した擁壁など、様々な環境変化に即していない擁壁が社会問題になっています。自治体ごとに定められる「がけ条例」は、高低差が2m以上の高低差がある場合、土地の所有者に擁壁の設置が義務付けされています。「がけ条例」の内容は自治体により異なります。土地の購入を検討している(既に所有している)方は、自治体、地域の工務店、不動産会社に確認するようにしましょう。

 

擁壁工事は、高低差などの条件に当てはまる場合、予め自治体に申請する必要があります。例えば、高低差2mを超える場合、その上や下に家を建てるには、建築新申請前に自治体に申請しておく必要があります。申請後、工事許可が下りるまで約1か月かかりますので早めの申請が必要です。高さ5mを超える崖は、急傾斜地崩壊危険区域に指定されますので、都道府県が擁壁工事を行います。

 

 

擁壁の種類別の特徴

擁壁には、3つのタイプがあります。

コンクリート擁壁、コンクリートブロック積み擁壁、石積み擁壁です。

鉄筋コンクリート擁壁なら崖に対して垂直に建てられます。敷地面積が有効利用できますが、工事費用がかかります。鉄筋コンクリート擁壁には、逆T字型、L字型、逆L字型などの形状があります。隣家の敷地に入らないように施工する必要があります。

コンクリートブロック積み擁壁は、ブロックを繋いで固めていく方式です。

石積み擁壁は、城壁のように石と石をセメント等で埋めてつなぎます。自治体により条例は異なりますが、つなぎがないと法律上の擁壁とは認められません。古い石積み擁壁のままでは法的に認められませんので、土地の売買をする際などを機に擁壁工事をしなおす必要があります。

 

擁壁工事の費用の目安

擁壁工事は、多くの場合、1㎡あたり5~10万円が相場です。高低差2mで幅10mの工事をする場合、20㎡になりますので、100~200万円ほどかかります。隣接道路が狭いと小型トラックで運搬するため往復階数などが必要となり工事費が嵩みます。

 

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擁壁がある家の擁壁工事やメンテナンスの注意点

コンクリート擁壁の寿命は約50年です。適切な配合で生成されたコンクリートなら支障はないと思いますが、震災や豪雨などの自然災害時には、地中の雨水を抜く水抜き孔の状況をチェックするなどの定期的なチェックや必要に応じた手当てが必要です。

 

老朽化した擁壁は、現在のがけ条例に適合しているか確認が必要です。基準を満たしていない場合は、修繕工事が必要になります。既に擁壁がある場合、補修工事程度では、根本的な解決に至らない場合がありますので、取り壊して再度作り直しますので工事費が膨らみます。土地を購入してからでは間に合いませんので事前に自治体に確認することが肝要です。

 

擁壁と境界

境界杭

擁壁が隣地との境界にある場合は費用負担をめぐるトラブルに注意が必要です。一般的に、高低差がある場合の擁壁は、高い側の所有者が工事費を負担します。地面を削って高低差ができた場合は、低い側の所有者が費用を負担します。または、相互に協議の上、擁壁費用をシェアする場合もあるでしょう。その場合、費用の負担の有無が所有者としてみなされるか否かになるという司法判断もありますので、子供の世代になっても過去の経緯がわかるように、記録に残して、相互に保管するようにするとよいでしょう。

 

擁壁がある土地を購入するポイント

土地や建物を購入する際は、物件の擁壁が基準を満たしているか確認する必要があります。

基準を満たしていない場合、不動産会社に相談して工事相当額の値引き交渉もできる可能性があります。

擁壁のある土地の扱いは専門知識が必要です。個人間でなく不動産会社などを経由した取引にするほうが専門家に相談しやすいのでおすすめです。

 

まとめ

擁壁がある土地や住宅を購入する際は、「がけ条例」などの自治体ごとの法令やガイドラインを確認する必要があります。高低差2m以上の場合は、土地所有者に擁壁の設置義務があります。既存の擁壁も老朽化している場合などは工事をしなおす必要がある場合もがあります。隣地との境界に設置する場合は、第三者(不動産会社等)とも相談しながら隣家と交渉や施工の情報を共有しながら解決していくことをおすすめします。

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著者情報

五十嵐 照勝

五十嵐 照勝代表取締役社長

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