活断層にはご用心
■地球のひび割れ
東日本大震災が忘れられないのはもちろんですが、
2016年の4月14日から連続して起こった熊本地震も
記憶に新しい地震ですね。
熊本地震は、活断層型の地震でした。
布田川断層帯と日奈久断層帯という、
比較的警戒されている活断層が動いたものです。
この活断層とはどのようなものでしょうか?
例えば地球を、正月の鏡餅だと考えてみてください。
正月前にはきれであったはずの鏡餅の表面には、
七草粥の頃になると、たくさんのヒビが入ります。
いわば活断層は、地震のひび割れのようなものです。
鏡餅の表面は乾燥して縮みますが、
中はまだ乾燥していないので縮みません。
結果として、表面の弱いところから裂けてヒビが入ります。
動いていないように見えても、表面と内部との違いで、
裂けてしまうのです。
地球は乾燥して割れるのとは違います。
内部は岩も溶けてマントルとして常に動いています。
そのマントルの動きにつられて、
表面にも力が伝わってきています。
さらに、その表面の地層も、
じつは意外と激しく動いています。
鏡餅と同じように、地表の弱いところには
細やかなひび割れが発生しているのです。
ただし、単純なヒビとは違い、裂けたヒビだけではなく、
ずれたりたるんだりしてシワが寄ることも断層となります。
そして、一度割れてヒビができるとか、シワが寄れば、
そこはさらに割れやすくシワの寄りやすい部分となります。
活火山や休火山を火山と呼ぶように、断層の中でも
動いていることが確認できる断層が活断層です。
その活断層の動きは、1000年で1cm以上という単位です。
1000年という単位は、よく地震で使われる単位です。
動いているのが1~10cmであればC級活断層で、
比較的活動度の低い活断層です。
10cmから1m以内でB級活断層、
1000年に1m以上動く活断層は、活動度A級の活断層となります。
日本全国では、活動度が高いA級活断層が約100ヶ所、
B級活断層が約750ヶ所あると言われています。
活断層地図には、これらの位置と活動度が書かれています。
■活断層がなくても怖い
ところが、例えば東京都心や関東平野東部には、
活断層はあまり見当たりません。
でも、それは決して安心できる話ではありません。
じつは関東平野は、厚い堆積層(たいせきそう)によって
地盤が隠されているので、活断層が見えていないだけのことです。
深層の岩盤面はおそらく、断層がないはずがありません。
アメリカでは活断層の上には、
住宅も建ててはいけないこととされています。
ところが日本では、すでに建ってしまっている
原子力発電所でも、活断層の有無が疑われています。
確かに活動度の基準があってA級活断層からC級活断層が
定められれば、活断層のことはわかっていると思いたくなります。
でも、残念ながら、それは人間が勝手に決めたことです。
実際に1000年の単位で、どの様に動いているのかということを
特定するのは、とても難しいことだと思います。
原発の専門家による活断層調査でも、
最終的な調査の結論で意見が割れていることを見ても、
それは充分に察することができます。
活断層地図の中にも、その難しさを実感できる記述を見つけました。
福井平野の活断層を見ていた時です。
そこに書かれていたのは福井地震断層です。
福井地震によって現れた活断層であるという旨の記述がありました。
福井平野には1948年に、マグニチュード7.1、
最大震度6の福井地震が起きています。
死者・行方不明者、3769人を出す大地震で、
この福井地震をきっかけにして、
気象庁は震度7を制定することになりました。
ここで注目しなければならないのは、福井地震の前には、
この場所には活断層があると考えられていなかったことです。
活断層があれば、そこは地震が起きる可能性のある場所です。
しかし、活断層がなくても決して地震が起きる場所ではないと
言い切れないのです。
同じことが2016年にも起きました。
4月に起きた熊本地震は、警戒されていた活断層が
動いたものですが、10月に起きた鳥取県の地震は、
これまでには発見されていなかった活断層が動いたものです。
明確な定義をもって計画し、大切な活断層地図を
制作したことには最大の敬意を表しますが、
まだまだそれらの活断層地図では、
わからないこともたくさんあるということです。
ただ活断層があれば、必ずまた、
同じ地域に地震がくることだけは分かっています。
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